元大相撲力士「舞の海」さんが新弟子検査の時に身長が足りず、頭にシリコンを入れて合格したお話は有名です。
私もはじめて聞いた時は荒唐無稽な冗談だと思いましたが、事実と知ってものすごくびっくりしたことを覚えています。
ただ、そもそも規則的にOKだったのか気になったので諸々のお話をまとめてみました。
- 舞の海の「頭にシリコン」はOK?
- 他にもシリコンを入れた力士がいる?
- 嘘のようで本当の新弟子検査エピソード
歴史と伝統を重んじる大相撲界は厳格な規律でまとめられているイメージがありますが、人情深い部分も多いようです。
舞の海さんの「頭にシリコン」のお話と共に詳しくご紹介します。
舞の海の「頭にシリコン」は規則的にOK?
舞の海さんの「頭にシリコン」は当時の新弟子検査の規則的にはNGといえませんでした。
ただ、大っぴらにOKとも言えないはずなのでグレーゾーンだったといえるでしょう。
その後、禁止されて完全にNGになりましたが、現在は体格基準が事実上の撤廃になっているため、そもそも身長を気にする必要があまりないようです。
ちなみに、舞の海さんは既に用済みとなった頭のシリコンを抜いているみたいです。
残していても意味がないですし、健康への悪影響を考えたんでしょうね。
5cm足りなかった身長
舞の海さんが新弟子検査を受けた1990年時点では身長173cm以上が体格基準として定められていました。
ただ、身長168cmだったので5cm足りなかったそうです。
そこで大学病院に相談へ行ったところ、大塚美容外科を紹介されて頭にシリコンを入れることを提案されています。
当時の日本人男子の平均身長は171cmくらいで、体格基準を満たせず角界入りを諦めた人たちもそれなりにいたと聞きました。
それに、今よりも美容整形は一般的ではなかったはずなので、提案されても受け入れがたいと感じる人が多かったはずです。
そんな中、舞の海さんは頭にシリコンを入れる決断をしました。
きっと背景には高校教員採用試験の合格を蹴り、猛反対する母親を絶縁で振り切って上京したほど、どうしても力士になりたいという強い思いがあったんでしょうね。
術後は転げまわるほどの痛みで吐き気を感じ、食べたものも全部戻してしまったそうです。
それでも涙ぐましい努力の甲斐あって新弟子検査を合格して、その後は「平成の牛若丸」「技のデパート」と呼ばれるほど大人気のご活躍を魅せてくれました。
そのため、「それでいいの?」「嘘でしょ?」って思ってしまうような頭にシリコンもやった甲斐があったといえるかもしれません。
そして、新弟子検査は1994年9月場所から健康への悪影響を危惧して頭部にシリコンなどを入れる行為を禁止しました。
また、徐々に体格基準は緩和されていき、現在は事実上の撤廃になっています。
新弟子検査の体格基準とは?
大相撲力士になるためには大相撲協会が行っている「新弟子検査」に合格する必要があります。
そして、新弟子検査を受けるための資格として定められている身長・体重が「体格基準」と呼ばれています。
具体的には2023年9月28日時点で下記のように定められていて、普通は身長167cm・体重67kg以上必要です。
ただ、最後の方に記載されている「新弟子第二検査」という規定によって体格基準は事実上の撤廃になりました。
力士になるには
本場所前に行われている新弟子検査の基本となる資格は、義務教育を修了した健康な男子で、所定の身長・体重の基準(*)を満たし、一般は23歳未満、日本相撲協会が指定している社会人や大学のアマチュア大会で一定の成績を残した人については25歳未満であること。
所属したい部屋の師匠となる年寄(親方)を通じて、日本相撲協会に規定された必要な書類を添えて、力士検査届を提出する。さらに、日本相撲協会が指定する医師の健康診断ならびに新弟子検査に合格し、登録され、はじめて力士として認められる。*身長・体重の基準(令和5年9月28日現在)
出典元:https://www.sumo.or.jp/
・身長167センチ以上
・体重67キロ以上
ただし、三月場所新弟子検査受検者で、中学校卒業見込者に限り
・身長165センチ以上
・体重65キロ以上
検査時、体格基準に満たない者は、新弟子第二検査を受験し、その運動能力が十分であることを認められた場合、合格となる。
年齢の制約はありますが、力士としてご活躍できる運動能力があるなら体格(身長・体重)は問わないと明記されています。
背景には過去に小柄な力士が活躍していたこと、能力があれば十分通用すること、新弟子希望者が減ってきているので受入を増やしたいなど、様々な思いがあるようです。
また、そもそもなぜ体格基準が設けられたのかはっきりしたことは分かりませんでしたが、競技としての平等性や不利・怪我などの防止と考えるなら、十分な運動能力さえあれば問題ないですからね。
無理やり簡単にまとめてしまうなら、時代に合わせた変更といっていいかもしれません。
ちなみに、たぶん「健康な男子」という部分で頭にシリコンなどは禁止されているんだと思います。
舞の海以外にシリコンを入れた力士がいる?
舞の海さん以外にも「頭にシリコン」を入れた力士はいます。
具体的には大関「大受」(だいじゅ)としてご活躍された朝日山親方です。
身長158cmで当時の基準からすると10cm以上足りず、新弟子検査に三年間合格できませんでした。
そのため、頭にシリコンを入れることを決断しています。
また、検査当日は身長が縮まないように会場まで小型トラックに横たわって向かったという徹底ぶりです。
そんな努力の甲斐あって、ようやく合格することが出来ました。
その後、大関にまで昇りつめ、引退後は親方として弟子たちを育成しています。
なお、当時の技術では頭に入れたシリコンを取り除くことが難しかったため、親方時代の画像を見ると頭の形が少し不自然な時があります。
でも、現在は綺麗な形になっていたので、技術が追い付いて無事に取り除くことが出来たようです。
彼のような逸材で、身長というどうしようもない部分で力士の道を諦めた人がいたと考えると惜しいですね。
ただ、2023年9月28日に新弟子検査の体格基準が事実上撤廃されたので、今後は見逃さずに済んでほしいなーと思います。
舞の海と同じく嘘のようで本当の新弟子検査エピソード
舞の海さんの「頭にシリコン」も衝撃的でしたが、新弟子検査では他にも嘘のようで本当のお話がたくさんあるようです。
例えば身長検査では髪の毛を盛ったり、こっそり背伸びをしていても、合格のために見逃してもらうことがあったそうですね。
歴史と伝統を重んじる大相撲界は厳格な規律でまとめられているイメージがありますが、人情深い部分も多いことが伝わってきます。
そして、たんこぶを作るなどのお話も聞きましたが、体重検査に関する下記のエピソードは衝撃的でした。
体重がわずかに足りない者は検査当日、一升瓶に入った水をラッパ飲みして挑むこともあった。また、過去には体重計に飛び乗って針が大きく振れたところで、検査担当の親方もほんの一瞬、針が指し示した数字を見逃さず、両者の“阿吽の呼吸”によって規定体重をクリアしたという話も漏れ伝わる。
出典元:https://number.bunshun.jp/
水のラッパ飲みはまだ分かりますが、飛び乗って”阿吽の呼吸”は「それでいいのか!?」って心配になるくらいです。
ごまかしても後々、ご本人が大変になるだけの気もしますが、それでも合格させてあげたかったんでしょうね。
もちろん現在では通じないお話ですが、昔らしいといえば昔らしいエピソードで面白いです。
舞の海の「頭にシリコン」まとめ
- 舞の海の「頭にシリコン」は新弟子検査のグレーゾーンといえる
- 身長168cmで当時の173cm以上という基準に5cm足りなくてシリコンを入れた
- 新弟子検査を受けるための資格として定められている身長・体重が「体格基準」
- 「新弟子第二検査」という規定によって体格基準は事実上の撤廃状態
- 元大関「大受」の朝日山親方も頭にシリコンを入れて新弟子検査を合格した
- 昔は背伸びで合格するなど嘘のようで本当の新弟子検査エピソードがたくさんある
今回は元大相撲力士「舞の海」さんの頭にシリコンの話を含め、新弟子検査に関するお話をまとめました。
びっくりするようなお話ばかりでしたが、昔らしい人情も感じて面白かったです。
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